真珠の本物疑惑と定義

来店されるドイツ人の(特に年配の)女性から、

 

「これは、『本物』のパールなの?」

と聞かれることがよくある。

 

そこで私が、(「偽物を売るわけないだろうがぁ!」と少々ムっとしつつ、)

「もちろん、『本物』です!」

 

と答えてしまう前に、気をつけなければいけない点がいくつかあるのだ。

 

それは、何をもって、

「本物」といっているのか。

 

これが、意外に各自「本物の定義」が違ったりするので厄介だったりするのである。

 

まずは、プラスチックやガラスで出来たいわゆる真珠を模倣したまがい物(イミテーション)なのか、「本物」なのか、という場合の、「本物」。

 

この場合、

「はい、本物です」

 

の一言で済みそうなものであるが、ドイツではそうも言いきれない。

 

以前(たぶん、今から30年程前)ドイツ国内では、とある、スペイン地区の名前をしたマジョ◯カパール、という「模倣真珠」が流行、もう、猫もしゃくしも状態でたいへん良く売れたそうなのだ。

 

しかも、この魚の鱗をコーティングしたパールのコピー商品には、

「マジョ◯カパールと明記された商品のみが、『本物』のマ◯○◯カパールです!」

 

とかかれていたりして、あたかも、マジョ◯カパールというものが、自然界にあるかのようにドイツ国民にインプットされてしまったようでもあるのだ。

(しかもこれ、結構なお値段)

 

この、「うなぎパイ、とかかれたものだけが、本物のうなぎパイ」(注)的なキャッチフレーズの誤解を解く為には、「工場でつくられた」ものなのか、「自然(海、湖、河)のなかでつくられた」ものなのか、という違いで比較的簡単にわかってもらえる。

 

しかし、なかには「本物」は、「自然のなかで、(人間の力を借りずに)『自然』に出来たもののみ」と思っている人がいたりもする。

 

この場合は、

「はい。これは『養殖パール』です。」

 

というと、

「『養殖』?それじゃあ、『天然』じゃないのね?養殖だったら、『本物』じゃないでしょう?」

 

という話になることもあって、ここから『養殖』の説明を一からはじめるのがなかなか一苦労、、、。

 

ここでいう「天然真珠」は、まさに「偶然の産物」であり、そう滅多にみつかるものではない。

 

たまに、アワビを食べていて、「ガリっ」と小さな真珠が入っている場合もあるだろう。

 

あれなどはまさしく「天然」といえば天然なのだが、私たちがイメージする美しいパールにはほど遠いし、大きな奇麗な丸い真珠が偶然出来る(そして発見される)、などということは、まず、ないといえよう。

 

そんな量産などかなわぬ夢だった自然の産物を、日本が世界に誇る『ミキモト翁』が、アコヤガイの中に核を押し込んで、真珠を「養殖」することに1900年頃成功してからというもの、広く一般人の間にも普及することになったわけだ。

 

「人知れぬところで偶然真珠になった」か、「人が真珠になるように意図的に工作した」かの違いはあるが、「貝のなか」で真珠になった、という点で、「養殖真珠」も「天然真珠」も、どちらも『本物』の真珠、ということになる。

 

そういう意味では、「生きている貝のなかで生産された真珠」が「本物の真珠」で、その他が「偽物」と分類されるといえるだろう。

 

その「本物」にも、日本人のみなさまにもおなじみの、「アコヤ真珠」をはじめ、「淡水パール」「タヒチパール」「南洋真珠」といろいろと種類があり、貝の種類もさまざま、海水貝と淡水貝の違いすらあったりするのだ

 

でもこれは、またの機会にこの違いを説明したいと思う。

 

「本物」か「偽物」か、、、、。

これはこれで、宝石業界ではいろいろな意味で深刻なテーマでもある。

 

つづく

 

注 何を隠そう、私は、この「夜のお菓子」が大変好きであり、多少たとえが適切ではなかったような気もするが、、、、

この次はぜひとも、「真夜中のお菓子」のバージョンも食してみたいものである。