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ルーマニア記 12

いよいよ、我々の番だ。

 

万が一、頭の中が真っ白になった場合に備えての、カンペも用意してある。

オーディエンスの歓声が舞台裏まで聞こえてくる。

 

緊張度は最高値に達していて、もうなにも考えられない。

 

最後にメンバー全員で成功を祈って、ステージへ、、、、、、。

 

ウォーーーーッッッッッッッッ

 

と歓声がおしよせてくる。

 

これが、2万5千人の熱気か、、、、と思わずたじろぐほどの大音量。

 

前のほうの観客しかみえない。

うしろのほうは暗くてどこまで人がいるのかがみえないのだ。

 

幸いなことに、いったんステージにあがってしまえば突然震えがとまるタイプなので、あらためて自分のおかれている状態を確認してみようと辺をみまわすが、ライトはまぶしいし、舞台はでかいし、もうなにがなんだかわからない。

 

ヴォーカルもハイになっているのか、ステージ上を右に左に走り回っている。

見回すと、両サイドに一台、二台、カメラマンが二人いる。

 

そう、今、テレビ生中継されているのであった。

そして、三台目のカメラは、、、というと、なんとしっかり私の後ろにスタンバイしていた。

 

しかも、弾いている手をアップでうつしたり、横顔をズームしたり(やめてくれー)、とにかく私のまわりをウロウロするので、気が散ることこのうえない。

 

こちらも段々、「カンペがうつったらかっこわるいな、、」とか、「顔の右にはニキビがあるから左からうつしてほしいな、、」とか、「マニキュアぬってくればよかった、、」とか余計なことを考えだしてしまって、このカメラマンの存在は、非常に迷惑なのであった。

 

私が、うしろでカメラマンとたたかっているのも知らずに、ヴォーカルは私が持参したカメラを観客にほうにむけて、「エブリバディー セイ チーズ!!」なんていって写真を写してウケをとっている。

 

ライブも中盤に達して、私もこれといったミスもせず、オーディエンスは盛り上がっているし、ドライアイスの煙もモクモクでてくるし、気分はもう最高なのであった。

 

しかし、、、、

 

アクシデントは、思わぬところでおきる。しかも容赦なく。

 

そしてそれは、その日のライブで唯一のバラードで起こった、、、、、。

 

つづく