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ルーマニア記 7

「ハローグッドモーニング~!パオパオ!」

 

おもわず張り飛ばしたくなるような、ミッキーマウスの声が鳴り響く。(注1)

 

あれ、、、天井に弾痕、、、、、、。

 

うーん、ルーマニアにいるんだっけ、、、と寝ぼけ眼に思う。

手短かに身支度をすませる。

 

今日の朝のミッションは、メンバーを起こすことである。

バンド内で女ひとりだと、やはり、必然的にお母さんになってしまうようだ。

 

「朝ぐらい自分でおきてよねー。」

と思いながらも隣の部屋へ。

 

「トントントン」

(反応なし)

 

「ドンドンドン!」

(、、、、、)

 

なかに入ろうにも、鍵がかかっている。(あれっ?あけておくっていってたような)

 

あまり大きな声をだしても迷惑なので、お掃除のおばさんかだれかにあけてもらおうと、あたりをみまわすが、、、、誰もいない。

 

上の階、下の階、すべてのフロアにいってみたが、どこにも、ホテルの従業員らしきひとの姿は見当たらないのである。

 

しかし、使命にもえる私は、ホテル中を走る!走る!

 

どこかにだれかいるはずだ!

 

さんざん走り回った末に、フロントにおりていくと、(フロントで聞けばいいことにやっと気がついた、、、。遅いって!)

 

いた、いた、いました。

ホテルの従業員が勢揃い。

 

ロビーの大理石を総出で磨いている。

(おいおい、ここのホテルはロビーしか掃除しないのかい、、、。)

 

そこにいたおばさんに事情をはなすが、なかなか英語が通じない。

(共産圏の第二外国語はロシア語である。)

 

とにかく部屋まできてもらえることになった。

 

ひとり、メンバーの部屋の前で待っていると、

「私、今いったいなにをやっているのだろうか、、。」

と、突然むなしくなってきたと同時に、中でまだスヤスヤ寝ているであろうメンバーにも腹が立ってくる。

 

が、ここまでくれば、使命をはたすしかない。

すると、おばちゃんがやってきた。

 

鍵をあけてほしい、というと、

「だめ。」と首をふる。

 

「この部屋の友達をおこさなければいけないから。」といっても、

 

「そんなこと本当かわからない」といって聞き入れてくれない。(まあ、そりゃそうだけど)

 

「私たちはドイツから、ロックフェスティバルに出演するために招待されたロックミュージシャンで、、、、、」

とくわしく説明をしてみるが、前よりもっと疑う目つきになっている。(どうせ、あまり信憑性のない話に聞こえるのはわかってますよ、、、)

 

しまいには、「本当は違う目的なんじゃないの?」

とニヤニヤ笑っている。

 

冗談じゃない!

 

他に何の目的があるというのか。

もう、ここですっかりブチぎれた私が、

 

「今すぐあけないと、クレームだ!」

とおどすと、おばちゃんはしぶしぶ鍵をあけてくれた。

 

中にはいると案の定、男二人、半裸で爆睡している。

(勢いで入ったのはいいけど、冷静に考えると、かなり、ちょっと、、、、なシチュエーションである)

 

しかし、ミッションは起こすことなのだから、

気をとりなおして、

「あの~、、、。」

と小さな声で声をかけてみる。(さっきの元気はどうした!)

 

ギタリストが目をさまして、アレ?って顔をしている。

(そうだよね、部屋のなかに突然だれかがたっていたら、、、)

 

「起こしてっていったでしょ、、、。でもドア閉まってて、ホテル中走り回って、おばさんあけてくれなくって、、、」と事情を説明する私。

 

「へー、わすれてた。そんなに無理しておこしてくれなくてもよかったのに。(あくび)」

 

はあ?

ひとがどんな苦労をしたと思ってるんだ!

 

私はロックミュージシャンだ!お母さんじゃない!

(でも、お母さんは掃除のおばさんを脅して部屋にはいったりしません、、、)

 

時計をみると、かなしいかな、私はこのミッションに丸一時間費やしていたのであった、、、。

 

つづく

 

注1 この目覚まし時計は、朝にめっぽう弱かった私の為に、渡独の際母が買ってくれた世界一耳障りな代物のひとつ。あんなに朝起きれなかった私が、目覚ましなしでも自然にめがさめる体質へと変貌できたのも、すべてこのミッキー目覚ましのおかげといえよう。ありがたいや、ありがたや。