· 

ルーマニア記 3

ウィーンに戻った我々は、ビザを発行してもらうと、ふたたび国境へむかって車をはしらせる。

 

ハンガリー入国のあとは、ルーマニアにむかうのみ。

気をとりなおしての再出発である。

 

ハンガリーの道路状態は、きれいな乙女の肌のような(アスファルト)ドイツのアウトバ-ン(それよりきれいな日本の道路はまさに赤ちゃんの肌)にくらべると、あちこちににきびが出来ていてボコボコ。

 

「結局、ハンガリーだもんね」

 

ビザのショックから立ち直れていない私は、やけになげやりだったりする。

(逆恨みもいいところだ)

 

そんな意味もない反ハンガリー感情にひたりながら、ボーっとしていると、突然車がとまった。

 

渋滞だ。

 

事故でもあったのか?と前方をみると、かなり長く車の列がみえる。

「国境まで続いてるわ、これ」とベーシストが平気な顔でいう。

(彼は何度か車でルーマニアまで行った事があるらしい)

 

へっ?国境?そんなのここからみえないじゃん、、、、。

 

みえるのは、だだっ広く、なーんにもない風景のなかに限りなく続く車、車、車、の列である。

 

みまわしてみると、周りの車は99%ルーマニアナンバーである事実を発見。

買い出しの帰りなのか、どの車も、「満杯」だ。

 

たぶん、車が、「満杯」の状態は想像が難しい、と思う。

(私も生まれて初めてそこで目撃した)

 

よくここまで、積み込んだね!と感心してしまうほどに、車の半分がぎっしり詰まっていて、ともかく屋根まで、隙間、というものがないのだ。

 

しかも、周りの車は例外なくこのつめ方のテクニックにより満杯であり、「これが、ルーマニア式車内荷物収納の技術なのか、、、」と妙に納得してしまう。

 

が、車のほうはというと一向に前に進まない。

 

周りのルーマニア人はさすがに慣れているとみえて、余裕だ。

 

もうすでに、道路脇にテーブルなんかをだしてくつろいでいる。(おいおい)

 

時々、我慢できなくなった車が(もちろん、ドイツやオーストリアナンバーなのだが)道路脇を通って前に行こうという反則技をだしてくるが、そこは敵もさる者。

 

ルーマニア人はそれを封じ込める技をもっていて、みごとなチームワークによりその車は前にも後ろにも進めない状態においこめられて、クランクションの嵐のなかみんなの総スカンをくってしまうのであった。

 

 

と、突然、周りにエンジンの音が!

おっ、前に進むぞ!

 

メンバーの顔がみるみる明るくなる。

「ブルルルル、、、」

 

「、、、、、、、。(あれ?)」

 

進んだ距離、約2m。

 

「、、、、、、。(沈黙)」

 

そりゃないよ、、、。

 

そんなことをしているうちにしっかり夜はふけていった。

 

なーんにもすることはないし、寝るにはまだはやいし、、、、と手もちぶさたでいると、

「ドンドン」

窓をたたく音がする。

 

窓をあけてみると、若い男(というか、少年)がたっている。

「パサポルタ」(注 ルーマニア語でパスポート)

 

国境がみえもしないのに、なんでこんなところでパスポートなんだよっ。

(ゲッ、こいつ機関銃もってるよ、、、。ヒエーっ)

 

こわいよー!(涙) 

 

とビビっていると、その男、ちゃっかりギタリストにたばこをねだっている。

お目当てはそれだったらしい。

 

外国ナンバー(特にドイツとオーストリー)の車をねらって、タバコや酒をゲットしているのだった。

 

しかも、その男のワンポイントアドバイスは、

「国境のコントロールでは、ウイスキーをだせ」

 

ウイスキーはいいけどさ、もっとはやく国境をこえられる裏技ってないわけ?

 

そんな兵士(のようだった。でも、どうみても、16か18才位)が何人もあたりを機関銃もってうろついていて、とにかくこわくて異様な光景である。

 

次の朝。

 

おおっ、100mくらい進んでいるぞ!

(運転していたギタリストは夜通しほとんど寝たまま車を前に進めていたらしい。神業だ。)

 

結局、1kmほどの道のりを12時間かかってしまったわけであるが、コントロールがみえはじめた時点で、一応ベーシストがワンポイントアドバイスのウイスキーを買いにいく。

 

そして、国境。

 

「、、、、ドイツ人はビザが必要です。」(うそでしょ、、、、涙)

 

一瞬にしてメンバー全員が顔面蒼白になったのはいうまでもない。

 

しかし、そこは、例のウイスキーが効果を発揮したのか、現金(もちろんドイツマルクね)とひきかえにその場でビザがもらえてしまったのであった。(注)

 

(因みに、日本人はビザはいらない。どういうコネが、協定が、日本とルーマニア間にあるのかは不明だが、このときほど自分が日本国籍であることを誇りに思ったことがあったであろうか!)

 

ホッとする一同。

 

こうして我々はやっとルーマニアの地をふむことができたのであった。

つづく

 

注 現在は、ドイツ人もビザが必要ないようである。